基礎代謝を知ろう
人間が1日で消費するカロリーの60%を占めるのが基礎代謝です。人間が生きている以上、基礎代謝は行われ、カロリーが消費されています。運動する時だけカロリーが消費されると勘違いしていませんか?
生命を維持するのに欠かせないのが血液が細胞に運ぶ酸素や栄養分です。それをつかさどるのは、心臓の拍動です。その他にも、内臓はずっと消化吸収を続けています。また、骨や筋肉などの細胞も絶えず新しく生まれ変わっています。このように、生命の維持に欠かせない必要最小限のエネルギーの事を基礎代謝と言います。
人間は、運動しないで横になっているだけでも、エネルギーを消費しています。このほかに、運動したり、生活するために動いた時に使われるエネルギーを活動代謝と言います。食事をしたときに、熱が発生しますが、これは食事誘導性熱産生と呼びます。
1日に消費されるエネルギーの中で、基礎代謝が占める割合は60%、活動代謝は30%、残りの10%は食事誘導性熱産生です。ここからもわかるように、ダイエットには、運動も大切ですが、基礎代謝をあげることもとても重要だという事がお分かりになるでしょう。
基礎代謝のベスト5
基礎代謝が使われる部位とその割合を調べてみました。
1.肝臓 27%
2.脳 19%
3.筋肉 18%
4.腎臓 10%
5.心臓 8%
筋肉より肝臓がエネルギー消費の第一位とは意外ですね。実は、肝臓には、身体に取り込まれた物質の大部分が集まってきて加工されます。つまり、代謝に関する大部分の事を行っています。体内で一番大きなエネルギー消費工場とでもいえるでしょう。
脳は、あらゆる情報を素早く処理する機能を働かせるために、グルコースと言う糖質成分をエネルギーにしています。
筋肉は、収縮するときに大きなエネルギーを使いますが、ATPと言うアデノシン三シン酸を産生しながら、筋肉は動きます。
腎臓は、人間にとって有害な窒素を体外に排泄する重要な役目を担っています。いわば、代謝残物の排出口ですね。
心臓は、ご存じのとおり、血液を体内に巡らせるために、24時間365日絶え間なく動いています。息(呼吸)は自分でしばらくの間止めることが出来ますが、心臓を自分の意志で止めることは出来ませんね。
肝臓が代謝量を多く使われる理由
肝臓は、胃の裏側にあるとても大きな臓器です。この肝臓は、私たちは生きていくためにとても重要な臓器で、臓器の中でも一番の働きものです。実に500種類以上もの代謝作業を行っていると言われています。
肝臓の機能のひとつに、小腸から門脈を通って運ばれてきた栄養素を貯蔵して体内で使えるカタチに加工します。例えば、単糖類のグルコースは、肝臓内でグリコーゲンへと姿を変えます。このグリコーゲンは、筋肉にも少しは蓄えられますが、多くは肝臓で蓄えます。このグリコーゲンを再加工できるのは、肝臓だけです。その理由は、グルコース6-ホスファターゼと言う再加工に必要な酵素が筋肉には存在しないからです。肝臓に蓄えられたグリコーゲン(糖)は脳を動かすための重要なエネルギーになります。眠っている時に脳がしっかりと働いているのは、この肝臓に蓄えられたグリコーゲンのおかげなんですね。
肝臓の働きとしてこのほかにも、糖質、たんぱく質、脂質の代謝や合成を行うのも大きな仕事です。人体が活動し生命維持をしていくに必要な物質のほとんどが肝臓で合成されます。
その他にも、アンモニアや間接ビリルビン(注:関節ビリルビンは赤血球が分解されて生じる物質です)、更には毒物などをも分解、排泄、他の物質への変換を行っています。ちなみに、赤血球は寿命が約120日。この日数を超えると肝臓や膵臓で分解されます。。
肝臓のもう一つの大きな役割には、胆汁を生成することです。その胆汁の生成量は、一日当たり500ml~800mlもあるんです。胆汁が作られるのは肝臓ですが、蓄えられるのは胆嚢と言われる臓器です。胆嚢からは胆管を通って十二指腸で分泌されて、水に溶けない脂肪成分と結合して、水と緩和させることで脂肪の吸収を助けています。
肝臓と言う臓器は、これだけの大きな仕事を24時間やり続けているので、当然の事ながらエネルギーの消費量は大きくなって当然ですね。肝臓内では、ATPを次から次へと産生して、それを合成のエネルギーにするするという事が、果てしなく繰り返されています。
脳が代謝エネルギーを多く使う理由
脳には感覚・運動・創造などのとても高度な精神活動をつかさどっている人間の器官です。脳の活動のカギは電気です。
少し難しいですがもう少し突っ込んで説明すると、脳の細胞が活動していない状態を脳の静止状態と呼び、脳細胞の電位を静止電位と呼びます。静止状態の時の脳細胞外の電位を、0ミリボルトとすると細胞内の電位は、マイナス90ミリボルトになっています。
脳が活動してくるとこの細胞内外の電位が大きく変化します。細胞外を0ミリボルトとすると、細胞内の電位は、プラス30ミリボルトに変化します。この電位の差によってあらゆる情報が伝達されていきます。
この電位差が生じるのかと言う仕組みはこうです。細胞膜にはチャンネルと呼ばれるイオンを通過させる役割を持つ場所があるからです。脳細胞が静止状態の時には、カリウムイオンだけが通過できる「K+チャンネル」だけが開いていて、カリウムイオンはそこに存在しています。
しかし、脳細胞が活動すると活動電位になりナトリウムイオンだけが通過できる「Na+チャンネル」も開き、ナトリウムイオンが細胞内に流れ込み、細胞内の電位が上がるのです。上がった電位は、わずか0.002秒と言う極短時間でまた静止電位に戻ります。
この静止電位に戻るときに大量のATP(アデノシン三シン酸)が使われるのです。ナトリウムイオンを細胞外に出して、Na+チャンネルを閉じるのにエネルギーが必要になります。脳を含めた神経細胞は1000億個~2000億個もあると言われています。
脳はこれらの多くの細胞の電位を瞬時に入れ替わるときに膨大なエネルギーが使われるので、基礎代謝の18%もの量を消費しているんです。
筋肉が代謝量を多く使用する理由
筋肉細胞を構成している最小単位まで突き詰めてみると、粘原繊維に行きつきます。この粘膜繊維は、ミオシンとアクチンと言う2つの不ラメントから成り立っていて、これらが収縮することが筋肉全体の収縮につながります。このミオシンとアクチンのユニットの長さは、何と0.0002mmです。このユニットが縦方向にずっと並んで私たちの筋肉は形成されています。20センチメートルと言う大きく長い筋肉には、何と100万個ものユニットが並んでいます。これらのユニット一つ一つが収縮することで、人間の動きが生まれています。
この筋原線維の収縮の起こる仕組みは次の通りです。筋肉細胞にある筋小胞体からカルシウムイオンが放出されます。そしてそれをきっかけに、ATPからリン酸が1つ外れた時に出るエネルギーによって、筋肉が収縮します。また、筋肉が弛緩する時にもATPが必要になります。この理由は、エネルギーを使って、カルシウムイオンを筋小胞体に戻さないといけないからです。これが出来ないと筋肉は収縮しかできなくなってしまうのです。
このように筋肉活動の弛緩や収縮のどちらにもATPのエネルギーが必要となります。筋肉には、ATPが多くは蓄積されていません。激しい運動をすると10秒ほどで使い切ってしまいます。そのようなことから、筋肉のATPを産生する方法として、次の3つの方法で行っています。
1.糖質を酵素で化学変化させてATPを生み出します。
2.クレアチンリン酸を分解して、そこからリン酸を取り出して、ATPを産出します。
3.脂肪や糖質、更にはたんぱく質をクエン酸回路と言う場所で化学変化させてATPを産出します。
このなかで、糖質を酵素で化学変化させてATPを産出するときには、酸素を必要としますが、それ以外の産出方法には、酸素なしでエネルギー(ATP)を産出できます。
腎臓が代謝量を多く必要とする理由
腎臓の働きには大きく分けると3つの働きがあります。
1.たんぱく質の代謝物質を尿として排泄します。
2.私たちの体内のペーハー(pH)を、7.4̟プラスマイナス0.05に維持することがあります。この数字の範囲を超えると致命的な悪影響が出ます。
3.ホルモンを分泌する内分泌機関です。
人間にとっての3大栄養素は、糖質・脂肪・たんぱく質ですが、この中で、体外に排泄する方法を考えると、糖質と脂肪は、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)で出来ているので、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)にして汗と呼吸にして排泄する事が出来ます。
しかし、たんぱく質は厄介です。この理由は、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)に加えて、窒素(N)と硫黄(S)が加わるからです。窒素(N)と硫黄(S)は身体にとっては、毒であることや酸化してしまうと体内のペーハー(pH)を崩してしまいます。簡単に汗や呼吸で排泄出来ないものを尿素にして腎臓から排泄するのです。
私たちの体内で生まれた代謝物は、血液の血流で腎臓に運ばれます。血球など身体に必要な成分を除いた血漿がネフロンと言う腎臓内の濾過(ろか)装置で濾過されます。ネフロンは、毛細血管の塊である糸球体と尿細管からできていて、その数は腎臓1個で約100万個になります。また、この腎臓で濾過される血液の量は、1日で約180リットルにもなります。ところが、この99%近くは尿細管に再吸収されます。この時に、まだ使えるアミノ酸やブドウ糖などは、そのまま身体に戻されます。そして、残った1%だけが尿素を凝縮した尿になって、体外に排出される仕組みです。
ちなみに、人間の血液の量は約4リットルですが、すべての血液が腎臓を1日に40回以上も通過していることになります。従って、その仕事量からして、凄く大きなエネルギーを使っているのです。
日本人の年齢別基礎代謝量の平均(1日の基礎代謝量)
参考までに、日本人の基礎代謝量の平均値のデータがありますので記載します。もちろん年齢や性別により基礎代謝量は変化してきます。
年齢 基礎代謝量(男性) 基礎代謝量(女性)
20歳代 1570kcal 1180kcal
30歳代~40歳代 1520kcal 1140kcal
50歳代~60歳代 1380kcal 1100kcal
70歳代以上 1230kcal 1070kcal
参考にされてください。